世界の端

フレディ&シンシア


「宿なんてあったんだ・・・」
「メタ発言は止めろ。あるもんはあるんだよ」

 金銭的問題で一つしか部屋が取れなかったものの、和室で重厚な造りの部屋。カプセルホテルというものが世の中にはあるらしいが、フレディが絶対に嫌だと駄々を捏ねた結果がこれである。
 機嫌良く鼻歌を唄うシンシアに落ち着きは無い。座布団に胡座を掻いて座っているフレディの方がよっぽど落ち着いているようだ。

「うわ、下海だ!綺麗だなあ」
「はぁ?外真っ暗じゃねぇか、何も見えないだろ」
「あ、あんな所に人が。寒くないのかな、半袖で」
「はっ!?」

 何故か驚いた表情で立ち上がったフレディが戦々恐々とした顔で隣に並び、シンシアの視線を辿って海を見る。砂浜が見えるのだが、そこにはぽつりと人影が見えた。白いワンピースに白い肌が見える。
 それを見てフレディが顔を蒼くした。どうしたのだろうか。

「どうしたの?ねぇ、何そのアホ面」

 問いには答えず、すっとフレディがカーテンを閉めた。

「いいかシンシア。陽が昇るまではこのカーテンは絶対に開けるなよ。いいな?ふりとかじゃないからな?」
「え?何でそんなに必死なの・・・」
「いいな?」
「えー、うん、分かった」

 外を見る事を禁じられたシンシアはそろそろ寝よう、と洗面台へ。歯磨きをして顔を洗って寝るのが日課なのだ――

「シンシア!どこ行くんだよ!?」
「ハァ?歯を磨こうと思って・・・え?何、なんでそんなに慌ててるの?」
「も、いいから寝ようぜ?な?」

 フレディを無視。歯磨きを終えて居間へ戻ると何故か布団の上に正座した保護者がいた。というか布団敷いてくれたらしい。というか――

「布団くっつけ過ぎでしょ。馬鹿じゃないの?」
「いや、布団が・・・入らねぇと思って・・・」
「部屋の広さだいぶ余ってるけど」

 この後、お願いだからこのままにしててくれと言うフレディの言葉に従ったのだが、夜中に数回起こされた時は本気で殺意が湧いた。

 どうしてホラーになったのか、っていうのが一番のホラー。