真白
ディラスは茫然とその光景を見つめた。決してあり得ない、いや、あり得て欲しくない現象だし俄には信じ難いのだが――
「へぇ、私ってこんな顔してるんだ」
「ねぇ、ちょっと歌ってみてよ」
目の前に真白が2人いる。
ディラスだけではなくメンバー全員の目が点になっているこの事態。一番落ち着いているのは分裂だか増殖だかした真白自身である。
「ま、真白」
「「何、ディラス?」」
ぴったり同時に返って来た返答に頭が痛くなる。どちらも間違い無く相棒たる真白だ。ややあってショックから立ち直ったらしいマゼンダがくつくつと嗤った。何かを考えている目だ。
「じゃあ片方貰っていいだろ、真白っち。どっちかあたしと来いよ。イリヤ達も喜ぶだろうし」
「おい、いいのかそれで」
「何だよディラス。じゃあお前、2人とも面倒見るつもり?」
――無理だろうそれは。
口にこそ出さなかったがそれだけは薄々分かった。人付き合いが嫌いなディラスが2人に増えた真白の面倒を見られようはずもない。
一方で顔を見合わせた真白達はすでに話題への関心が薄れたのか、互いに話をしている。
「どっちがマゼンダと行く?」
「私が行くわ。たまにはディラス以外の人と行動するのも悪く無い気がする」
「そうなの?じゃあ私は自由にしているから」
「ディラス放っておいていいの?」
「本人が落ち着くまでは放っておいた方がいいんじゃない?」
――ああ、頭が痛い。